「組織開発入門」から学ぶ、人と人との関係性が価値を生む
近年、企業や自治体、学校など、あらゆる組織で「組織開発(OD)」という言葉が注目されています。
しかし、実際には「人材開発と何が違うの?」「チームビルディングのこと?」「意識改革?」など、ぼんやりとしたイメージのままの方も多いのではないでしょうか。
今回は、「2015/5/19 入門組織開発 (著)中村和彦」をもとに、組織開発の基本的な考え方、背景、実践のポイントをわかりやすくご紹介します。

入門 組織開発 (光文社新書 755) | 中村和彦 |本 | 通販 | Amazon
なぜ今、組織開発が必要なのか?
組織開発(organization development)という。略してOD。
かつての日本型組織は、終身雇用・年功序列・同質性・一体感といった前提のもとで、機能していました。
しかし、バブル崩壊、成果主義の導入、非正規雇用の増加、テクノロジーの進展……
こうした急激な変化により、組織の“前提”は崩れ、次のような課題が生まれました。
・組織の一体感の喪失
・部門間の分断(サイロ化)
・信頼関係や協働の欠如
・心理的安全性の低下
・新しい価値創造の停滞
こうした中で、「制度を変えるだけではうまくいかない」と気づいた多くの組織が、“関係性”や“対話”に目を向け始めたのです。
組織を見る2つのレンズ:「ハード」と「ソフト」
本書では、組織を「ハード面」と「ソフト面」の2つの視点から捉える重要性が説かれています。
さて、組織には「ハードな側面」と「ソフトな側面」の二つの顔があります。 組織のハードな側面とは、形があるものや明文化されたもののことで、組織の部門や部署などの組織構造や組織デザイン、制度や規則、職務内容や仕事の決められた手順、戦略や理念などを指します。~略~これらは明文化・可視化され、公式的に定められているものです。
本書よりP21)
組織開発に重要なものそれは・・・( ゚Д゚)
・ハードな側面:「目的・戦略」「構造」「業務の手順・技術」「制度(施策)」
・ソフトな側面:「人(タレント)」「関係性」
組織のソフトな側面とは、人に関するさまざまな要素、たとえば人の意識やモチベーション、人々の思い込みや前提、コミュニケーションの仕方、協働性や信頼関係、お互いの影響関係やリーダーシップ、組織の文化や風土など、刻々と変化するものを指します。~略~これらは明文化・可視化されておらず、人や関係性といった心理的な側面です。
本書よりP21、22
ソフトな側面まさに人の感情、信頼、風土、文化、関係性、意識など目に見えないものが多いですね。
「人(タレント)」は、個人の能力、スキル、リーダーシップ、意識やモチベーション、感情や満足度などです。「タレント」とは人の能力や才能のことを指します。(本書よりP24) そして、同じくソフトな側面である「関係性」にはさまざまなレベルがあります。部署内のレベルとしては、コミュニケーションの仕方、お互いの協働性やチームワーク、リーダーシップのありよう、などがあります。部署間でや部門間のレベルとしては、他部署・他部門とのコミュニケーションや連携、組織全体のレベルとしては、組織の文化や風土が挙げられます。
本書よりP24,25
組織開発の重要な部分は、ソフト部分である人にまつわること。昨今の人的資本経営もこの部分に焦点がやっと充てられています。人手不足や後継者不足になってやっと気づく、人こそが財産なのだと!
しかし、人間的側面のマネジメントこそ最重要課題だと捉え、それに投資して継続的に働きかけている経営者は少ないのではないでしょうか。
本書よりP25、26
1990年代、バブル経済が崩壊した後、日本の企業は落ち込んで収益を回復させるために、組織のハードな側面に対する変革を行ないました。合併や提携、戦略の立案などの「戦略」の変革、人員削減や部門改組などの「構造」の変革、IT化や業務プロセスのリエンジニアリングなどの「業務の手順・技術」の変革、多くの日本企業が行なった成果主義の導入に代表される「制度」の変革です。いわば、組織のハードな側面に大ナタが振るわれたわけで、大規模な外科手術が組織に施されたことになります。
本書において外科手術から体質改善の必要性を説いています。
体質改善はまさにソフトな側面のことです。なぜ、日本の企業が失われた30年という表現がよく分かります。日本企業はバブル崩壊後、ソフトな側面、人や関係性を完全に無視してIT導入により人件費の削減、成果主義の導入によりチームよりも自分の成績を優先し、人と人の関係性に対して「コスト」をかけない効率性・生産性のみの利益主義の追求に走った結果がまさに失われた時間なのです(´;ω;`)ウッ…
組織開発は、組織のハードな側面だけではなく、「人」や「関係性」という組織のソフトな側面にも光を当てて変革に取り組むアプローチです。組織の中の「人」や「関係性」の側面(モチベーションやコミュニケーション、協働性や関係性、組織の風土や文化など)は、人々の意識や行動によって刻々と変化していきます。また自分の体調や体重をマネジメントするためには、その人自身が自分の健康について問題意識をもち、日頃から意識や行動を改善する必要があります。それと同じように組織でも、効果的で健全な関係性が育まれるためには人々の意識や行動が変わることが重要で、そのための持続した長期的な取り組みが必要になります。組織開発は、漢方薬による治療や生活習慣の改善による組織の体質改善のようなものです。
本書よりP27
今更ながら、やれ人事評価だ、1on1だ、エンゲージをあげるだ、エンパワーメントだ、給料をあげるだ、といっても根本的な理由に気づいていない会社が「組織開発」をやります!と言っても無駄に終わる可能性が高い。なぜ、組織開発を行う必要があるのか「意味」を見出さないといけません( ゚Д゚)キリリ
それは、人が自ら仕事をやりたいと感じ、内発的動機づけを高めるためには、仕事の意味が腹落ちすることが必要だということです。何のためにやっているかがわからない仕事は、内発的動機づけを高めることは決してありません。
本書よりP34
人は自分の仕事に意味をなさないとき又は見出さないとき、それは単なる作業となり得えます。意味がない仕事は人は心からやりたいとは思わないことが多いのではないでしょうか。
自由に意見が言え、新鮮な意見や情報が聞け、創造的なアイデアが生まれるよう活き活きとした会議やミーティングは楽しいものです。そのような会議やミーティングは、メンバー間の協働性や創発性が生まれる場になる可能性があります。
本書よりP50
よいミーティングとはどのようなものが生まれるでしょうか?
しかし、会議やミーティングという対面の場で、同時性コミュニケーションを行なうことでしか生まれないものが三つあります。①創造的思考、②チーム学習、③将来のビジョンや目標の合意、です。
本書よりP51
改めて会議はチームを成長させることができるツールですね(;゚Д゚)
②のチーム学習は、マネジャーやメンバーがチームとして学んでいくことです。仕事上の内容や課題について学ぶとともに、業務の進め方や仕事の仕方、会議やミーティングの進め方や仕事の仕方、会議やミーティングの進め方やお互いのコミュニケーションの仕方(創造的思考をするためにはどのように話し合えばよいかを含めて)を学んでいきます。つまり会議やミーティングの場が学習の場になっていくわけです。
本書よりP52
無駄な会議は撲滅せよ、ですが会議こそがチームが一体となって学ぶチャンスがあります。
そして良い会議は、情報共有そして会社内で起こっている問題を全員で考えるチャンスでもあります。
コンテントとプロセス
組織はある一つの目的・目標に向かって人が集まる集団です。
現代では、ビジネス、NPO、地域活動などなど様々です。
単なる趣味の世界でもいわゆる集団が組成されチームが出来上がりますね(;゚Д゚)
組織開発の有名な研究者であるエドガー・シャインは、1965年に記した著書『組織心理学』の中で、組織を「ある共通の明確な目的、ないし目標を達成するために、分業や職能の分化を通じて、また権限と責任の階層を通じて、多くの人びとの活動を合理的に協働させることである」と定義しています。
本書よりP64
エドガー・シャイン先生は、「プロセス・コンサルテーション」、「文化とリーダーシップ」、「キャリアダイナミクス」など組織と人に関するたくさんの研究があります。そして組織開発における第一人者でもあります。既に亡くなられましたが、今こそ組織開発を勉強する人たちはシャイン先生の本を読みましょう!(;゚Д゚)私も頑張りますよ!
レヴィンはグループの「今ここ」における「コンテント」と「プロセス」という対比で「プロセス」という言葉を用いました。「コンテント」とはwhatの内側、つまり、何が話され、何が取り組まれているかという、話題、課題、仕事の内容的な側面です。一方「プロセス」とはhowの側面、つまり関係的過程(お互いの間で起こっていること)を指します。
本書よりP72
クルト・レヴィン先生の「コンテント」と「プロセス」の区別は、組織やグループの理解において非常に重要だと感じます。表面的な話題や課題だけでなく、「どう」関わり合いが進んでいるか、つまり人間関係やコミュニケーションの流れに注目する視点は、問題の本質を捉える助けになります。この考え方は、組織開発やチームビルディングでの効果的な介入に欠かせないものであり、実践でも意識したいポイントですΣ(・ω・ノ)ノ!

氷山モデルは、目に見える表面的な問題だけでなく、その背後にある価値観や信念、感情などの深層要因が組織や個人の行動に大きく影響していることを示しています。この視点は問題解決や組織変革において、本質に迫るために欠かせないですねΣ(・ω・ノ)ノ!
~略~話されている内容(=コンテント)は海面上に表れている白い部分として表現され、目が向きやすいことを図示しています。~略~1人ひとりの気持ちやお互いのコミュニケーションの様子、お互いの影響関係などは、氷山の海の下に隠れた部分のように、目が向けられにくいという特徴をもっています。
本書よりP74
会議で話している内容(コンテント)も大事、そして何よりもその内容を話しているのか?プロセスを知ることに本当の意味を知ることができるのです。すべての言葉や行動には「意味」があるのですね。
社会心理学者のスタイナーは、グループで何らかの課題に取り組む際の生産性を予測する概念として以下の式を提唱しました。
実際の生産性=潜在的生産性-欠損プロセスに起因するロス
グループの実際の生産性は、メンバー1人ひとりがもつ潜在的生産性から、お互いの間で起こるプロセスによるロスを引いたもの、という公式で、この考え方は「プロセス・ロス」と呼ばれています。
書よりP75
なぜ、生産性や効率性が落ちるのか、この算式で理解できました。
スタイナーの「プロセス・ロス」の考え方は、グループの生産性を理解する上で非常に示唆的です。メンバーの潜在能力が高くても、コミュニケーションのズレや役割の不明確さなど、プロセス上の問題が成果を妨げることを示しており、組織やチーム運営において人間関係や進行の質を高める重要性を再認識させられました。チーム力向上のためには、能力だけでなく、プロセスの改善も不可欠だと思います。
~略~日本企業における現代的課題のほとんどは、このプロセス・ロスに当てはまります。仕事に対するやる気、仕事の意味の腹落ち感、個業過による協働作業の減少、多様性の増大による協働の難しさなど、日本企業にはプロセス・ロスが生じる多くの問題があります。
本書よりP77
本書で日本の組織の現代的課題を①活き活きとできない社員②利益偏重主義③個業化する仕事の仕方④多様性の増大が挙げられています。働き方改革により時間はなくなる、何につけても「〇〇ハラスメント」により上司が部下に声をかけれない、組織をフラット化しすぎリーダーにしわ寄せがいく組織体制、経営者がさらに勉強していないなどなど、プロセス・ロスが生じる心理的コストが多くあります。
なお、スタイナーはその後、「プロセス・ロス」だけではなく、「プロセス・ゲイン」も起こることを主張しました。「プロセス・ゲイン」とは、グループの中での相乗効果によってメンバーの潜在的生産性を超えて、実際の生産性が高まるという考え方です。ミーティングでの対話を通して誰も思い付かなかったアイデアが生まれる、メンバーで協働することで1人では決して成し遂げられないことが達成できる、などが「プロセス・ゲイン」の例です。
本書よりP77、78
心理的安全性が「ある」組織には、こういった状況がよく見えます。
日本で一番大切にしたい会社(坂本先生)でもよく紹介されていますね(;゚Д゚)
チーム内でのアンコンシャスバイアス(思い込み等)がないとき、まさに相乗効果が生まれ、すごいことが起こるフィーバー状態ですね。失敗を恐れない組織にも見受けられる光景です。
サイロ化が進んだ場合にはまさに「プロセス・ロス」しか生じません。
「社会関係資本」という考え方があります。これは、コミュニティや組織の中の信頼関係やお互いのネットワーク、助け合いの規範という関係性を資本と捉えるものです。社会関係資本は、その形成に投資しないと目減りするとされています。~略~会社の他部署に知り合いがいれば、何かを尋ねたり、依頼したりすることがしやすくなります。つまり、ネットワークがあることによって仕事がしやすくなるので、ネットワークという関係性が資本だと考えるわけです。
本書よりP79、80
チームがまとまったときの、経済価値がとても大きいです。この表現をソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と言われますので、生産性・効率性の高い集団ができている状態ですね(*'▽')
「関係性に投資した分、収益が本当に上がるのか?」という疑問に対しては、「収益は結果として付いてきます。まずは、強く活き活きとした組織をつくっていきための長期的な取り組みと、そのための投資が必要です。投資をしないこと、何もしないことによるリスクも考える必要があります。何もしなければ、関係性や風土はより目減りしていき、組織の土台が弱体化する可能性があります」と私は答えています。
本書よりP80
関係性に投資をしないで、戦略や制度、器材ばかりにコストをかけても「仏作って魂入れず」の世界です。人事評価に長時間をさく経営者の方に質問をしたことがあります。なぜ長時間使ってまで評価をするのか、経営者の方は、人のことについてどれだけ時間を使えるか、それは経営に必ず返ってくるからですとのこと。まさしく時間をかけて、この企業はとても強くなっています(;゚Д゚)
「組織開発とは、組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的である」(ウォリック・筆者薬)と定義しました。
本書よりP81
組織開発の定義をじっくり考えましょう( ゚Д゚)
組織開発を「健全さ・効果性・自己革新力」を高める計画的かつ協働的な取り組みと定義するこの言葉は、単なる制度改革や効率化ではなく、人や関係性に根差した継続的な成長のプロセスを重視している点で共感しました。組織を“生きた存在”として捉え、共に創り上げていく姿勢が組織開発の本質だと感じます。
組織開発は「価値観ベースの実践」といわれています。これほど他の組織変革のアプローチと組織開発が異なる点です。ロバート・マーシャクは、組織開発の根底にある価値観として、①人間尊重の価値観、②民主的な価値観、③クライアント(当事者)中心の価値観、④社会的・エコロジカル的システム志向性を挙げました。
本書よりP90
じっくり考えますΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)
組織開発が「価値観ベースの実践」とされる点に、他の変革手法との本質的な違いを感じます。マーシャクの挙げた4つの価値観は、人間性や主体性、持続可能性を重視する姿勢を示しており、短期的成果だけでなく、長期的に健全で協働的な組織づくりを支える土台になると強く共感しました。
OD実践者は「チェンジ・エージェント(変革推進体)」と呼ばれます。これは初期のTグループ(人間関係のトレーニング方法、「T」はトレーニングの略)で重視された発想で、その後の組織開発の発展の中で受け継がれていきました。すなわち、ヒューマニスティックで民主的な組織や社会になっていくことを目指し、OD実践者がチェンジ・エージェントになっていくという考え方です。
本書よりP91
チェンジエージェントは変革の使徒とも言われます。クルト・レヴィンが仲間と創設したNTLも、ナチスの迫害を逃れ民主的に組織をどう作るのか研究したんでしょうね。
1940年代、アメリカでの人種差別や官僚的組織という諸問題に対して、人間が尊重され、民主的な風土が生まれた組織や社会に変革していく担い手をTグループで養成しようという志が、Tグループのパイオニアたちにありました。
本書よりP93
Tグループの出発点に、様々な問題があり深く感銘を受けました。組織開発の原点に社会的使命があることを再認識しました(;゚Д゚)
アメリカと日本の組織開発の歴史
さて、組織開発はアメリカの組織開発の歴史でもあります。
組織開発の歴史は100年もたっていませんが、いろんな人が組織をよくしようと本当に頭が下がります。
アメリカにおける組織開発の歴史
本書よりP95から102
①【黎明期】1940~1950年代
グループ・ダイナミックスの研究者クルト・レヴィンによる「Tグループ」からチーム・ビルディングへの発展、そしてもう一方の流れが、心理測定論とし組織心理学の研究者であるレンシス・リッカートによる「サーベイ・フィードバック」からの発展。また、アメリカの西海岸ではUCLAを中心にTグループを用いて個人の感受性を高めることを目的とした「感受性訓練(ST:センシティビティトレーニング)が発展。
主な組織・人物:NTL(1947設立)、マクレガー(X理論・Y理論)、アージリス、ベックハード、ブレーク&ムートン、シャインなど。
②【発展期】1960年代
特徴:部署レベルから組織全体へのボトムアップ型アプローチ。官僚的組織からの脱却がテーマ。
代表的手法:
コンフロンテーション・ミーティング(日本では1970年代に「対決会議」と訳されました)
マネジリアル・グリッド(業績と人への関心を統合)
リッカートの「システム4」理論(民主的組織を目指す)
アメリカの会社OD部門の整備:企業内部に専門チームが設置されるように。
③【多元期】1970~1980年代
背景:オイルショック後、即効性と成果が求められる時代に。
変化:ソフト面(人間関係など)だけでなく、戦略・構造・制度といったハード面への働きかけも必要に。
新たな要素:HRM(人的資源管理)、QC活動やTQM(総合的品質管理)も取り入れる。
④【新アプローチと現在】1990年代以降
大規模ミーティング型の登場:多くの社員が集まり、未来像の共有と行動計画を合意。
代表的手法:
アプリシエイティブ・インクワイアリ(AI)
フューチャーサーチ
オープン・スペース・テクノロジー
ワールド・カフェ
アメリカにおける組織開発の歴史は、社会の課題や時代の要請に応じて進化してきたことがよく分かります。黎明期から一貫して人間性や関係性を重視する姿勢が根底にあり、時代とともにハード面への対応や大規模な参加型アプローチへと広がっていく過程は興味深いです。多様な手法が生まれた背景には、変化に柔軟に対応する組織のあり方を探求し続けた先人たちの努力があったと感じました。
日本でも組織開発の流れは起こっています。
日本における組織開発の流れ
本書よりP104~106
①1950年代後半〜1960年代前半:導入期
1958年:キリスト教教育の影響で、日本初のTグループが実施される。
1960年代前半:九州大学の三隅二不二らがTグループ研究を進める。
②1960年代半ば〜1970年代前半:産業界への広がり
Tグループが「感受性訓練(ST)」として企業研修に導入される。
主な手法:
ファミリー・トレーニング(体験学習型)
職場ぐるみ訓練(職場の問題改善)
マネジリアル・グリッド(成果と人間関係の統合)
③1970年代後半:転換期
組織開発的な研修は次第に縮小。
QC活動(品質向上の小集団活動)が主流に。
④ 2000年頃以降:再評価・再導入
コミュニケーションや関係性重視のアプローチが注目される。
コーチング研修
会議ファシリテーションの導入が進む。
日本における組織開発の歴史は、社会や企業のニーズに応じて変化し続けてきたことが分かります。特に2000年以降の再評価は、人と組織の関係を見直す好機として興味深いですね。
組織開発の大事なこと
組織開発とは「技術」ではなく「関わり方の哲学」に近いものです。
組織開発はその源流から重視されてきた価値観があり、価値観ベースの実践とされています。そのため、「何を行なうか(doing/doable)」という「手法」で組織開発らしさを説明することは困難を伴います。~略~当事者との関係構築に向けた「あり方(being)」が大切だと考えている~略~実際、実施する取り組みを現状に合わせて「カスタマイズすること」が組織開発では大切だとされています。
本書よりP110
実際の現場では、状況や人間関係、組織文化は一つとして同じものはなく、マニュアル通りに進めても期待した効果は得られません。だからこそ、ODの実践では、当事者との信頼関係を築きながら、その場に応じて柔軟にアプローチをカスタマイズすることが大切とされます。組織開発は特別なプロジェクトではなく、日々の会話や会議、フィードバックの中でも生きるものであり、「人の可能性を信じ、組織に前向きな変化を起こす」ことを目指す継続的な姿勢なのですΣ(・ω・ノ)ノ!
組織開発の基本は「プロセスに気づき、働きかけ、よくすること」です。これは、日常の部下や同僚とのコミュニケーションや、会議などで行うことが可能です。
本書よりP123
組織開発は、表面的な手法に頼るのではなく、人と人との関係性や信頼の構築を土台にして進めていく、深い人間理解に基づいたアプローチだと感じました。だからこそ、正解があるのではなく、その場その場で問い続ける姿勢が求められるのだと思います。日々の職場での関わりの中にも、組織開発の視点を生かせる余地があるという点はとても実践的で、これから自分自身のコミュニケーションにも取り入れていきたいと感じました!(^^)!
組織開発の手法
マネジリアル・グリッドの本がAmazonで売ってました・・・・38,000円(´;ω;`)ウッ…
やはり名著は素晴らしい。
「マネジリアル・グリッド」―組織開発の古典的な手法 マネジリアル・グリッドによる組織開発は1960年代に提唱され、1970年代には日本でも取り組まれました。最近ではあまり注目されていませんが、この考え方やアプローチは組織開発を考える基本となるもので、現代でも適用できる普遍的なモデルです。
本書よりP130
「マネジリアル・グリッド」は、組織開発の古典的な手法として1960年代に提唱され、日本でも1970年代に広く活用されたという歴史的背景を持ちながら、今でも通用する普遍的な考え方を提示している点に非常に興味を持ちました。
マネジリアル・グリッドでは、マネジャーや組織を評価する軸として、業績に対する関心と人に対する関心の二つを挙げています。業績に対する関心とは、仕事が中心であり、業績を上げることを重視し、業績目標を達成することに関心を向けている程度のことです。一方の人に対する関心とは、人の幸福とお互いの関係性に関心が向いている程度のことです。
本書よりP130、131
特に印象に残ったのは、「業績への関心」と「人への関心」という2つの軸を使ってマネジメントのスタイルを分類し、それぞれのバランスを評価・改善していくというシンプルながら奥深いアプローチです。
ブレーク&ムートンが強調したのは、協調したのは、業績を上げることと人を大切にすることは両立しないので、業績か人かの二者択一を迫られるものである、と多くの人が考えいると示したことです。いわゆる、仕事か人間関係か、のトレードオフです。~略~これに対してブレーク&ムートンは、業績に対する関心と人に対する関心は必ずしも相反するものではなく、両方に対する関心を高めて統合することが可能であると考えました。
本書より‘131、132
多くの職場では、「業績を追うと人間関係が壊れる」「人を大切にすると甘くなる」といったように、業績と人間関係をトレードオフで捉える傾向があります。私自身も、職場で成果を求められる場面では、どこかで「厳しさ」が必要だと感じ、人間関係に無意識に負荷をかけてしまっていたことがあるように思います。しかし、ブレーク&ムートンの示した「業績と人の両立は可能であり、むしろ統合が目指されるべきである」という視点は、従来の二項対立的な発想を乗り越える大切な示唆を与えてくれました。
現代は心理的安全性やエンゲージメントといった言葉が重視される時代であり、ますます人に対する関心が求められるようになっています。一方で、ビジネスの成果がなければ組織は持続しないという現実もあるため、この2つのバランスをどう取るかは、今なおマネジャーにとっての最大の課題の一つです。そう考えると、マネジリアル・グリッドは「古典」でありながら、現代のマネジメント課題にも通じる非常に現実的かつ本質的な理論であると感じました。
気づきのモデル「ジョハリの窓」 ジョハリの窓は組織開発と関連が深く、組織開発の源流となったTグループで生まれたモデルです。~略~このモデルは、Tグループでの関わりから学ぶプロセスを図式化するために考えられたものです。ジョセフ・ラフトとハリー・インガムがこの図式を考えたので、2人の名前をつなげて「ジョハリの窓」と呼ばれています。
本書よりP148
「ジョハリの窓」は、自己理解と他者理解を深めるためのシンプルかつ強力なモデルであり、組織開発の根幹にある“気づき”のプロセスを視覚化してくれる点に大きな魅力を感じました。自分自身が意識していない側面が、他者との関わりの中で見えてくるという発想は、対話の大切さを改めて実感させてくれます。特に、フィードバックや自己開示の重要性を理論的に支えてくれるこのモデルは、職場でのコミュニケーションやチームづくりにも非常に有用だと感じました。
プロセス・コンサルテーションによる取り組み ~略~プロセス・コンサルテーションは、エドガー・シャインが提唱した組織開発の重要なアプローチで、二つの側面があります。一つ目の側面は、組織開発でOD実践者がクライアントとどのような関係性を築き、どのように支援をしていくかを示した考え方であり、哲学です。もう一つの側面は、グループまたは組織のクライアント(当事者)が自分たちのプロセスに気づき、自らプロセスの変革に取り組むことを支援するアプローチです。
本書よりP153
プロセス・コンサルテーションの考え方は、単に問題を解決するのではなく、クライアント自身が自らの状況に気づき、変化を生み出していく力を育てるという点で、非常に本質的で力強いアプローチだと感じました。特に、コンサルタントが上から指導するのではなく、対等な関係性の中で共に考える姿勢は、組織開発における信頼や尊重の価値観を体現しているように思います。この「支援のあり方」そのものが組織を育てる力になると実感しました。
1970年代の日本では、シャインのプロセス・コンサルテーションの考え方である、当事者自らが自分たちのプロセスに気づき、その変革に向けて行動を計画していいく取り組みは「職場ぐるみ訓練」と翻訳され、職場に起こっているプロセスを自ら分析して改善していく活動が行われました。
本書よりP161
1970年代の日本でシャインのプロセス・コンサルテーションが「職場ぐるみ訓練」として実践されたことは、組織開発の理論が現場に根付いた重要な一歩だと感じます。当事者自らが職場の課題やプロセスに気づき、主体的に改善に取り組む姿勢は、単なる指示待ちではない自律的な組織文化の醸成につながると思います。また、現場の声を反映した変革は持続可能で効果的であり、組織全体の成長を促す原動力になると実感しました。この考え方は今も組織運営において大切な示唆を与えてくれます。
AI(アプリシエイティブ・インクワイリー)の考え方 AIには社会構成主義というパラダイムが根底に流れています。社会構成主義を短く表すと、「私たちのリアリティは社会的に構成される」、つまり、私たちが現実をどのように捉えているかは、私たちの関わり方やものの見方、語られ方によって形づくられ、構成される、という考え方です。~略~「言葉が世界を創る」~略~すなわち、人々によて語られる言葉がグループや組織の風土や文化を形づくっていく、というわけです。
本書よりP169
アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)の根底にある社会構成主義の考え方は、とても深い示唆を持っていると感じました。私たちの現実や組織文化は、単なる客観的な事実の集積ではなく、関わりや対話、そして言葉によって形づくられているという視点は、新しい可能性を開きます。特に「言葉が世界を創る」という表現は、日々のコミュニケーションが組織の未来を作る力を持っていることを示しており、ポジティブな対話やストーリーの共有が組織変革の鍵になると感じました。この考え方は、組織開発における言語の力を再認識させてくれます。
ODがめざす組織の姿とは?
組織開発がめざすのは、「成果を出す」だけではなく、以下のような状態です:
-
多様性を活かしながら、協働できる
-
対話を通じて、学び合い、変化し続ける
-
メンバーが自分らしく、意味ある仕事に向かえる
-
一人ひとりが組織を“自分ごと”として捉えられる
これらは単なる「理想論」ではなく、関係性に働きかけ続けることで、現実として築いていける未来です。
まとめ:組織は「関係性のネットワーク」
『組織開発入門』は、組織を人と人との「関係性のネットワーク」として捉える視点を教えてくれます。
そして、変化をもたらす鍵は、私たち一人ひとりの中にあります。
会議の場をどうつくるか
日々の対話にどんな問いを立てるか
部下・上司・同僚との関係をどう育むか
組織開発は「大掛かりな変革」ではなく、小さな“関係性の変化”の積み重ねです。
この本は、その最初の一歩を踏み出すための、確かな道しるべになるでしょう。