企業文化を守るための但陽信用金庫の取り組み

企業とは、単に営利追及だけが目的ではありません。

企業はある意味ひとつの民族、ひとつの地域、ひとつのコミュニティとなり、企業が長く継続されればそこには企業文化が醸成されます。組織自体が文化共同体となります。

企業文化も含めて、社風や風土といったとらえ方もあります。

企業文化は経営者にも働く人たちにも外部の関係者にも影響を与えるものです。

兵庫県にある但陽信用金庫では、企業文化をどのように捉えているのか、下記の本書を通して学んでいきたいと思います。

2018/11/22 こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である (著)桑田 純一郎

Amazon.co.jp: こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である : 桑田 純一郎: 本

企業文化を守るための取り組み

但陽信用金庫は兵庫県加古川市に本店のある700人が働く規模の信用金庫です。

著者の桑田 純一郎さんが現在も理事長です。理事職は父上から承継されたようです。

但陽信用金庫の会社HP"よろず相談所"但陽信用金庫 (tanyo-shinkin.co.jp)

日本でいちばん大切にしたい会社6でも紹介されています。

桑田理事長は自分が父親でそこで働く従業員が息子・娘という考え方でより親身にそして一番近くで見守ることで従業員の方々と接しています。悩み事があったら自分の携帯にかけてね、ということで全社員の方が理事長の携帯番号を分かっているそうです。(ここは、四国管財の中澤会長も本に書かれていましたね)

従業員とその家族を大事にする、というのが「いい会社」の鉄則です"(-""-)"

桑田理事長が、いい会社にするための方法は本書にしっかりと書かれています。

しかし、即効性のあるものではなく何年も時間とお金をかけ企業文化を醸成されてきたことがよく分かります。

めまぐるしい世の中の流れに対して、我々はいち早く察知し、その変化にどんどん対応していかなければなりません。

~略~しかしその一方で、加速度的に変化する企業社会においても、絶対に変えてはならないもの、守り続けなければならないものもあります。

いまは「変える」ことの必要性ばかりが説かれていますが、私は変えること以上に、「守る」ことの重要性を社員には教えたいと考えています。変えるより、守るほうが労力を必要とするからです。

本書よりP187

企業文化を守ること、説明すること、そして事業を継続すること経営者の役割です。創業者ではない経営者は次の世代の経営者にどのようなものを渡すのか重要なポイントです。

桑田理事長の経営観は「山林経営」にあります。

山林経営は、木を植え手入れをしやっと商品になるまで数年かかります。現在だけ儲ければいいのではなく、現在の儲けは過去の山林経営者にかかわった人たちが植樹をし育てそれを後世に伝え、それが現在の売上になる。だから現在の経営者は未来のために植樹をし育て次世代に繋げるという役割があるのです(゚д゚)!

先祖たちの努力によって今日の糧を得ている

本書よりP18

代々と受け継がれる企業文化と伝統、そして地域社会へ役立つということ、必ずしも利益優先でない経営なのです。

但陽信用金庫で働いてもらいたい人は「人間愛」(やさしさ、思いやり、誠実)にあふれた人とのこと。

こういった人たちに働いてもらいたいと経営者が思うならば、経営者の行動はそれ相応に対応しないといけません。

所詮、口先だけに人はついてこないのです( ゚Д゚)

家族のように思い家族のように接するのが「家族主義」と言われる経営になります。

但陽信用金庫の文化になじめる人がそこで働けば、一種の民族でもありますね。文化になじめない価値観が共有できない人は、やはりこの「民族」では働くことに抵抗が生まれますね。

企業に訪問に行くと何やら気が張っています。これが企業の社風か、と思うこともよくあります。

余談ですが第三者でも、ここにいていい雰囲気・早く帰りたい雰囲気、すごく感じますね( ゚Д゚)

本書の第三章は「家族であるために」とういことで但陽信用金庫で働く「但陽人」としてのポイントが書いてあります。

人材不足を理由に企業が誰でもいいから手当たり次第に採用をしていると企業と合わない不一致の人物は必ずいます。悲劇というしかありません、雇うほうも雇われる側も時間とお金と心理的に浪費してきます。企業が欲しい人材像は「これだ」ということを経営者が分かっていないといつまでたっても不一致し続けます。

但陽信用金庫の新卒の男子は最初必ず寮に入るそうです。寮に入り先輩従業員、同期とすごす。同じ時間を共有できればできるほど家族として同じ価値観・文化になじんでいけます。

但陽信用金庫の企業文化に触れることは「異文化」に触れるということ。なおさら異文化コミュニケーションのためには現地に行ってともに生活することが一番重要です。

また企業の創業の地である兵庫県生野町を「源郷」(げんきょう)という表現で自分たちの原点として、慰霊碑などの様々な施設を置いているそうです。

企業文化を語るうえで目に見える重要なものとして「企業博物館」や「社史」もあります。どれも「創業の精神」ということで経営に携わる人にとっては忘れてはいけないものです。

最近では「パーパス」ということで存在意義も改めて見直されています。

世界のどの民族にも「源郷」と呼ばれる故郷があります。民族によっては聖地とされ、ときには生命を賭して争い守る対象とさえなります。

~略~但陽の源郷は、と問われたとき、そこに「創業の地」「創業の精神」そして「企業理念」があります。

本書よりP185

企業文化を守りながら、企業を継続させるために戦略として「独自性」や「優位性」がないと企業の継続発展はありません。企業文化が直接的な因果関係があり売上がドーンと上がるものでもないのは確かですが、働く人たちがどのような感情やモチベーションで仕事をしているかで会社の利益も違います。企業文化はすべての組織体に影響を与える相関関係はあります。

次世代の経営者が企業文化と「但陽人」をどのように育てるのか、変えていいこと変えてはいけないことをしっかりと見極めることができないといけませんね(゚д゚)!

あとがき

「源郷」という表現は、なるほどと思いました。

それぞれの民族には歴史があり、発生した地があります。

宗教においても聖地エルサレムなど有名ですもんね。

組織で働く人々は民族であり、家族である。文化の派生はいつも人から発生する。

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